一発逆転

これまで大した思い出もなく生きてきた。
容姿は普通だと思うし、頭も良くはないけれど、それなりだ。
ちょっと太めなのが気になるが、太り過ぎではないと思う。
特別な理由も見あたらないのに、なぜかまったくモテない。


いつものことではあるが、2月を迎えるのは特に憂鬱。
私にとって最も縁遠い「あの日」が来るからだ。
本命はもちろん、義理すら母親からしかもらったことがない。
はっきり言って、今年の2月14日が土曜日でよかった。
のんびりと自分の部屋にいれば、寂しさも少しはまぎれる。
たとえ、あこがれのあの子が他の男子にチョコをあげたとしても。

 
恋愛経験のない俺だが、やはりあの日のチョコは特別な意味がある。
クラスの一番人気で、可愛らしく、笑顔が素敵なあの子。
学年一の美人としてみんなの憧れの的でもあるあの子。
欲を言えば彼女からもらいたいなって、何をいっているんだ・恥

 
自宅に帰ろうと思い、机の中の荷物を鞄に入れようとしたときのこと。
ノートを床に落としてしまい、拾い上げようとしたら、一通の手紙が出てきた。
「か、彼女からだ」差出人の名前を見て悲鳴を上げそうになった。
喉をゴクリと鳴らし、手紙を手にとってゆっくりと読み始めると…。
 

連絡先が分からなかったので、手紙で伝えることにしました。
学校ではなかなか話す機会がないけれど、受け取って欲しいものがあります。
この手紙を読んで、もし良かったら2月14日に体育館の裏に来て下さい。

あぁ!俺にも春が来るのか!!やったぁぁぁぁ!!!

  
問/あの子が受け取って欲しいものとは何?